本当は「あの主要キャラ」が殺される予定だった…『もののけ姫』“幻のエンディング”とは
「アシタカせっ記」をめぐる攻防
ジブリ映画『もののけ姫』は、大きな山猫のようなモノノケに、三の姫が無理矢理嫁がされるという初期設定版の内容に由来しています。この三の姫の名前だけが残り、映画版『もののけ姫』のヒロインがサンと命名されました。しかし、映画版の主人公はサンではなくアシタカです。そこで宮崎駿監督は、「アシタカせっ記」というタイトルを考え出しました。この「せっ記」とは、宮崎の造語で、草の陰で人の耳から耳へと伝わった物語という意味が込められています。
しかし、鈴木敏夫プロデューサーは、「アシタカせっ記」よりも『もののけ姫』のほうがいいと感じたと言います。「もののけ」という言葉と「姫」という相反するイメージの言葉をドッキングさせる意外性、それによって生まれるインパクト、さらに「姫」がいた時代の話なんだからというのがその理由だったと述べています。また、これまでの宮崎作品にはいずれも「の」が入っているというジンクスもあったとのことです。
解決不能な課題
1995 年 12 月 22 日、ジブリの新作の特報が放映されることになりました。この特報では、ヤックルに乗ったアシタカが矢を射ろうとするその姿に合わせて、『もののけ姫』のタイトルが大きく映し出される予定でした。この特報を宮崎監督は放送を見ていなかったため、しばらく気づかなかったそうですが、翌年 1 月 2 日に鈴木プロデューサーのもとを訪れると、「あれ、出しちゃったの?」とだけ大声で尋ねたと言います。鈴木プロデューサーはごく普通に「出しました」と報告し、宮崎監督は特に返事をせずに部屋に戻ったそうです。
作品の正式なタイトル
こうして『もののけ姫』というタイトルが作品の正式なものとして決まったのです。ジブリ映画の製作過程では、タイトルの選定も非常に重要なポイントとなります。タイトルが作品のイメージやインパクトを表現している場合も多く、『もののけ姫』もその一例です。鈴木プロデューサーが感じた「もののけ」と「姫」という言葉の組み合わせが、作品の魅力を高める効果をもたらしたと言えるでしょう。
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