大崎事件再審請求、高裁支部も棄却
再審請求の却下
福岡高裁宮崎支部は、鹿児島県大崎町で1979 年に発生した男性殺害事件「大崎事件」の被告である原口アヤ子さんの4度目の再審請求を却下しました。鹿児島地裁決定を維持し、原口さん側の即時抗告を棄却しました。原口さんの裁判のやり直しは認められませんでした。大崎事件は、男性が自転車ごと深さ約1メートルの溝に転落し、牛小屋のたい肥の中から遺体で見つかる事件で、原口さんは殺人などの罪で服役しています。
事件の経緯
大崎事件の被害者は当時 42 歳の男性であり、鹿児島県警は義理の姉の原口さんと、原口さんの当時の夫ら親族3人を殺人や死体遺棄容疑で逮捕しました。原口さんは捜査段階から一貫して無罪を主張していましたが、鹿児島地裁は1980 年、親族3人の自白などを踏まえて、原口さんに懲役10年の判決を下し、確保しました。しかし、原口さんは出所後の1995 年に1回目の再審を請求したのを皮切りに、今回の4度目の再審請求まで続けてきました。
再審請求の理由
再審を求めることができるのは、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と規定されているため、原口さんの弁護団は今回の再審請求で、二つの「新たな証拠」を柱に裁判のやり直しを求めました。一つ目は、男性が殺害されたのではなく、自転車の事故によって死亡したという主張です。二つ目は、男性を救助した住民の証言について「信用性に疑問がある」と主張するものでした。
再審請求の棄却
去年の鹿児島地裁決定では、原口さんの弁護団が主張する二つの証拠について、「無罪を言い渡すべき、新証拠には当たらない」と結論付け、再審請求を退けていました。福岡高裁宮崎支部も今回、「地裁決定は、論理則、経験則などに照らしておおむね不合理なところはない」と判断し、鹿児島地裁の決定を維持して即時抗告を棄却しました。このため、原口さんの裁判のやり直しは認められなかったことになります。
再審権と課題
再審を求めることができるのは、「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」と規定されているため、再審請求は容易なものではありません。しかし、冤罪の可能性を排除するという観点から、再審権は大切なものであることは間違いありません。しかしながら、再審のためには、適切な証拠の収集や解釈を行うためのシステムが必要であり、その点において、日本の法制度には改善すべき課題があることも指摘されています。
編集長からのコメント
冤罪事件はたびたび報じられていますが、本件のように、再審請求が却下された場合、被告にとっては絶望的な状況となることも考えられます。日本の法制度においても、再審権が十分に保障されているとは言いがたく、今後、その点に改善を加える必要があるのではないでしょうか。また、日本においては、司法制度そのものが独立したものであるという認識が低いため、司法に対する信頼が低くなっていることも課題です。最後に、本件で再度、冤罪に対する社会的な意識を醸成する必要があると考えます。
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