山田洋次監督 シネコンの自動券売機「難しい。僕も苦手」年配世代の映画ファンを気遣う
映画『こんにちは、母さん』の初日舞台挨拶
山田洋次監督の映画『こんにちは、母さん』の初日舞台挨拶が都内で行われ、吉永小百合、大泉洋、永野芽郁らキャスト陣と山田監督が登壇しました。この作品は、永井愛の同名人気戯曲を山田洋次監督が描いたもので、山田監督の監督作品としては90 本目にあたり、自身が91 歳の時に制作された等身大の親子の物語です。
舞台挨拶では、主演の吉永小百合は「映画は映画館で見てくださいと日ごろから申し上げているんですけど、まだまだ暑い日々、大変な思いをして来てくださったことと思います」と観客に感謝の気持ちを述べました。一方、息子役の大泉洋は、「映画館の中は涼しいですから、涼しいところで楽しい映画を見ていただければ」と映画館の魅力をアピールしました。そして山田監督も、観客の来場と、豪華なキャスト陣に感謝の意を示し、「監督冥利につきます」と感激の表情を見せました。
山田監督の心情と新たな取り組みについて
この映画は、海外映画祭でも大きな反響を呼んだそうですが、山田監督は作り手としては不安な面もあるようです。「どう観客が感じてくれたのか」と心配しながらも、この映画を作る過程で現代の社会を考えたいという気持ちが根底に流れていたと語りました。
さらに、山田監督は「この歳になると、今の時代が気になるんです。最近、この国だけじゃなくて世界中がちょっと変だと思う。なんでこんなことになってるんだろうという思いを重ねながらこの映画を作ったつもり。そういうことについて考えたり学んでみたい」と述べ、社会を見つめる真摯なまなざしをのぞかせました。
シネコンの自動券売機への懸念
山田監督は、自動券売機に慣れない年配世代がいることに対し、懸念を示しました。「この撮影が始まるころスタッフとも話していたんですけど、近頃、シネコンで映画を見るのが難しくなってきて。カードで買わなきゃいけなかったり。僕なんかとても苦手ですね。どうボタンを押したらいいか分からない。けっこうそういう年配の人たちは多い。そういう人たちが映画館に行っても、戸惑って切符が買えないという妙な事態にもなっている。どうしてそんなお客が来れなくなるようにしてしまうんだろうと、ときどき怒りすら覚えているんですけど」と述べました。
一方で、山田監督は自動券売機が苦手な年配世代を気遣いつつ、「映画館で映画を見る楽しさをこの映画で改めて感じてもらえたら」と期待を寄せました。また、山田監督は映画館側にも年配の方々に対応する努力をしてほしいと場を託しました。
エディトリアルとアドバイス
映画館とテクノロジーの調和を模索すべき
山田監督が指摘したシネコンの自動券売機への懸念は、現代のテクノロジーが進化する中で、映画館という伝統的な場所での体験が変化していることを象徴しています。一方で、テクノロジーは映画の普及にも一役買っている側面もあります。例えば、オンラインで映画の予約・購入ができることで、より多くの人々が映画館を利用することが実現しました。
しかし、年配の方々のようにテクノロジーに慣れていない人々にとっては、新しいシステムに戸惑うこともあるでしょう。その点で、山田監督が映画館側に対応の努力を期待するのは理解できるものです。映画館は、テクノロジーと伝統の融合を模索しながら、より多くの人々に映画を楽しんでもらうための方法を考えるべきです。
映画の魅力を再発見する機会として
また、山田監督はこの映画を通じて、映画館での映画鑑賞の楽しさを再発見してもらいたいという思いを抱いています。確かに、自宅で映画を観ることが容易になった現代ですが、映画館ならではの臨場感や独特の雰囲気は貴重なものです。
特に年配の方々にとっては、昔ながらの映画館の雰囲気や映画が持つ魅力を再度味わう機会は、きっと特別なものになるでしょう。映画館は、自動券売機の使い方やチケットの購入方法など、利用者のニーズに合わせたサービスを提供することで、ますます多くの人々に魅力的な映画体験を提供していってほしいと願います。
映画は、私たちの感性や思考を刺激し、新たな視点を与えてくれるものです。山田洋次監督の映画『こんにちは、母さん』も、きっと多くの人々に感動を与える作品となるでしょう。年配の方々も含め、映画館での映画鑑賞の楽しみを再度味わってみてはいかがでしょうか。
<< photo by Emre Ateşoğlu >>
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